# 読解 (一) - 2022 年 12 月 N1
# 文章
安く売るべきか、品質にこだわるべきか。事はそんなに単純ではない。どんなに良い商品であったとしても、できるだけ価格を抑えるための努力は必要だ。品質にこだわる戦略というのは、品質さえ良ければどんなに高くても買ってもらえるという短絡的な戦略ではない。
できるだけ価格を抑える努力はしているけれども、それでも品質にこだわるとこれ以上は安くできない。他社の商品よりも高いのだけれども、それだけの価値はある。だからその差額を許容してほしい。そう訴えることが、品質にこだわった正しい戦略である。
# 問題
# 品質にこだわる戦略とは、どういうことか。
- 1. 品質に見合った価格であると主張する。 ◯
- 2. 品質の良さと価格の低さを主張する。
- 3. 価格に合わせた品質であると主張する。 ☓
- (できるだけ価格を抑える努力はしているけれども、それでも品質にこだわるとこれ以上は安くできない。他社の商品よりも高いのだけれども、それだけの価値はある。)
- 4. 価格よりも、品質の良さを主張する。
# 読解 (二) - 2022 年 7 月 N1
# 文章
A
ビジネスで相手をうまく説得したいとは誰もが思うことだろう。私が最も意識しているのは、相手の性格や価値観、知的水準などに応じた説明のしかたをすることだ。具体的で明快な例を求める人もいるし、データに基づいた繊密な説明を好む人もいる。さまざまなタイプに合わせて対応することで、説得力を高められるように努めている。
ただ、どのような相手でも、まずは話を聞いてもらえなければ意味がない。そのためには、話し方や服装などの最低限のマナーは身につけておかなければならない。中身のある話ができればいいとこれらを軽視する人もいるが、初対面で悪い印象を持たれてしまうと、そもそも話を聞こうとは思ってもらえず大きなマイナスになってしまうからだ。もちろん相手の印象を気にしすぎるのは問題だが、いい印象を持ってもらうことはプラスに働くことも多いと思う。
B
説得力を高めるための第一歩は、「送り手」としての自分自身の信頼度を高めること。「この人は信用できそう」といった印象を与えることです。多くのビジネスパーソンが服装や言葉づかいを気にするのも、信頼できる印象を与えたいからに他なりません。
何よりも重要なのは、説得内容に関連した知識や情報を十分に吸収し、専門性を高めておくことです。
(中略)
仕事に関連する情報というのは、日常生活の至る場面に転がっています。街を歩いていても、ショッピングモールや行楽地に出かけても、人々の行動バターンヤライフスタイル(注)を知るヒントが見つかります。専門的知識や情報を生活に密着した形で提示することができれば、より説得力が増すはずです。説得力のある人には日頃から研究熱心な人が多いのもそのためです。
好印象も説得力につながります。人の話に耳を傾け、言葉と心のキャッチポールができる人は、間違いなく好印象を与えます。
(注)ライフスタイル:生活様式
# 問題
# 説得力を高めるために必要なことについて、A と B はどのように述べているか。
- 1.A も B も、専門性の高い説明ではなく、日常生活の身近な例を挙げて説明することだと述べている。
- 2.A も B も、相手の要求を理解するために、話をしっかり聞くことだと述べている。 ☓
- A: ただ、どのような相手でも、まずは話を聞いてもらえなければ意味がない。
- B: 好印象も説得力につながります。人の話に耳を傾け、言葉と心のキャッチポールができる人は、間違いなく好印象を与えます。
- 3.A は相手に合わせた説明をすることだと述べ、B は専門的知識や情報を多く集めて生活に結びつけながら説明することだと述べている。 ◯
- さまざまなタイプに合わせて対応することで、説得力を高められるように努めている。
- 専門的知識や情報を生活に密着した形で提示することができれば、より説得力が増すはずです。
- 4.A は相手の求める内容を的確に説明することだと述べ、B は相手に合わせて情報量を調整することだと述べている。
# 読解(三) - 2022 年 7 月 N1
# 文章
植物は美しい花を咲かせ、虫を誘った。鳥は飛ぶために翼を生やした。しかし、生物は、自ら求めてそのような性質を得たわけではない。生命にとって新しい変化は偶然によってしか生まれない。
DNAが複製され、親から子に受け渡されるとき、こくこく稀に、ほんのわずかな誤植(注1)が発生する。もちろん誤植はランダムに(注2)おきる。ささいな誤植は新たな変化をもたらす。その変化自体には目的も意図も方向性もない。そこから何かを選びとるのは自然環境である。自然環境に適した変化は選択され、子孫を残す。環境に不適な変化は子孫を残せず、淘汰される(注3)。
ところが。もし本来ならあっさり淘汰されてしまうような変化であっても、それを選びとり、守り、育むような「選択者」が自然以外に存在すれば、その変化は生きのびることができる。そんなことが近年、実はたくさん、あちこちで起こっている。近年、といってもそれは、人間がこの世界に出現して以来のこと。
たとえば鳥。鳥は卵を産むと巣に籠って暖める性質を持つ。数週間それに専心する(注4)。しかし、もし何らかの突然変異によって鳥の習性が変化し、卵を産んでも暖めることを放棄してしまったら。そんな変化は、子孫を残すのに圧倒的に不利だかとうたら、たちまちそんな鳥は淘汰されるはず。
ところが人間はその鳥の卵を鳥に代わって暖め子孫を増やしてやることにした。なぜか。鳥は卵を暖めることを放棄したかわりに、またすぐに次の卵を作りはじめる性質を持っていたから。こうして現在、私たち人間は、毎日排卵し(注5)、毎日のように卵を産みっぱなしにして平然としている鳥、すなわち、一年に300個以上も卵を産み続けるニワトリ、ホワイトレグホンのを選びとった。
たとえば②カイコ(注6)。カイコはもともとクワコという蛾の一種だった。人間が常時、餌を供給して人工的な環境を与えた。すると幼虫は自分で餌を探索するのをサボるようになった。その分の余力をもっと別なこと、つまり絹糸を作り出す能力に振り向けるような種が選別された。かくして自分ではほとんど動けず、必要以上に大きく厚手の繭(注7)を作りだし、そこから出ることも飛ぶこともできないような昆虫が作り出された。カイコは人間がいないと生きていけない。
(中略)
人間がその進化のプロセスに介入し、自然になりかわって選択者としてふるまい、作りかえ、新たに生み出した生命。その生命たちはもはや人間なしでは生きていくことができない。一方、人間もまたそんな生命に助けられ、あるいは支えられて生きている。これは人間と人間が作り出した生命との新たな共生関係とも呼べる。
人間が登場して以来、進化の歴史は新しい局面を迎えた。人が作りかえたいのち。それに対して人間はきちんと責任を取らなければならない。
(注1)誤植:ここでは、ずれ
(注2)ランダムに:偶然に
(注3)淘汰される:ここでは、滅びる
(注4)専心する:集中する
(注5)排卵する:ここでは、体の中で卵を作る
(注6)カイコ:絹糸を作り出す虫
(注7)繭:虫が自身を包むための球状の覆い
# 問題
# 筆者によると、自然界で子孫を残した生物はなぜ子孫を残せたか。
- 1. 自然環境に合わせて自身を変化させたから ☓
- そこから何かを選びとるのは自然環境である。自然環境に適した変化は選択され、子孫を残す。
- 2. 自身に適した自然環境を選んで移動したから
- 3.DNA が複製されるときに、ずれが生じなかったから
- 4.DNA に生じた変化が、たまたま自然環境に合ったから ◯
# 読解 (四) - 2021 年 12 月 N1
# 文章
下の文章はプールで水泳をするときの準備運動について書かれたものである。
よく、プールなどで、水着に着替えると、ろくに準備運動もしないで、水に飛び込んで「水泳のべテラン」のような格好をしている人をみかけますが、これは絶対にまねてはいけない見本です。水泳は全身運動、しかも体にいろいろな負荷や刺激を与える。いわばかなり激しい運動ですから、水に入る前の準備運動をするのは鉄則だといえます。
まず、筋肉をほぐしましょう。
プールの水温はたいだい30度前後です。なれている人にとっては温かく感じられますが、初めての人はとても冷たいと思うでしょう。人間の体温は36度前後ですが、水の熱伝導率はとても大きく、空気の20倍だそうですから、水は体から熱をどんどん奪っていってしまいます。そのため、しだいに体が冷えてきて、血行が悪くなり、筋肉のけいれん(注1)を起こすことがあるのです。
このように、水温によって筋肉に血行不良が起こり、柔軟性を失い、けいれんを引き起こすことがわかります。そこて、練習を始める前に、あらかじめ筋肉の血行をよくし、筋温度を高めておかなければなりません。準備運動のとき、下半身に重点をおいて柔軟体操をすることです。ふくらはぎ(注2)、太ももの裏の筋肉などをとくに念入りに伸縮させ、ウォーミングアップし(注3)ておきます。
また、あわせて関節を柔軟にし、どのような運動も無理なくできるようにておくことが大切になります。首、肩、ひざ、足首そしてふくらはぎなどのストレッチング(注4)を、あらかじめ十分にしておきましょう。
(注1)けいれん:筋肉が自分の意志とはかかわりなく、勝手に震えたように動くこと
(注2)ふくらはぎ:足のこの部分
(注3)ウォーミングアップする:本格的な運動に入る前に体をよく準備する
(注4)ストレッチング:伸ばすこと
# 問題
# 準備運動について筆者がすすめていることはどんなことか。
- 1. 水泳は全身運動であるので、全身の筋肉をほぐす運動を水中で行うと
- 2. 下半身の柔軟体操を行うことともに全身のストレッチングをしておくと ◯
- 準備運動のとき、下半身に重点をおいて柔軟体操をすることです。
- 3. 下半身の柔軟体操をする際に太ももの裏の筋肉の状態をしらべておくと
- 4. 関節を柔軟に動かせるようにいろいろな全身運動を合わせて行うのが ☓
- あわせて関節を柔軟いにし、どのような運動も無理なくできるようにておくことが大切になります。首、肩、ひざ、足首そしてふくらはぎなどのストレッチング(注 4)を、あらかじめ十分にしておきましょう。
# 読解 (五) - 2019 年 7 月 N1
# 文章
シアノバクテリアと藻類が誕生し、地球上を酸素で満たすまでには 20 億年以上の時間を要したのに対し、現代人が地球環境を大きく変えるようになったのは、たかだかここ100~200 年のことである。光合成生物が大気環境を変えるのに費やした時間と比べると、人間が環境を変えた時間はあっという間といえる。そのため、大昔の非常にゆっくりとした大気環境の変化は、当時の生物た ちには適応するのに十分な時間があったが、今の急速な環境変化には、多くの生物種が適応できずに絶滅する可能性が高いかもしれない。そのため、人間は 大きな問題を起こしているのだ、という人もいるだろう。
ところが、地球の長い歴史の中では、人類の活動よりも短時間で地球環境を大きく変え、生態系を非常に大きく攪乱した事件があった。今から6500 万年前の中生代白亜紀末の大隕石の衝突である。これにより飛び散った破砕物が大気中で浮遊し(注1)、太陽光の地上への到達を妨げたといわれている。それが植物による光合成を強く抑え、また地上の寒冷化を引き起こしたと考えられている。そしてこのとき、当時優占していた(注2)恐竜をはじめ、多くの生物が絶滅することになった。ところが、これほど急激で大きな生態系の攪乱に直面しても、生き残ったものがいた。そして、その生物たちは、新たにつくられた環境に適応しながら、多様な生態系をつくってきたのである。
このことを考えると、生物というものはとてもタフで、打たれ強いものであることがわかる。すると、今、人類が強い力で地球環境を変えて生態系を大きく攪乱しても、人類は滅びるかもしれないが、その急激に変化する環境をうまく生き抜き、新たにつくられた環境の中で繁栄する生物種が必ず出てくるに違いない。そして、生物がそこに存在することができれば、そこには生物たちの相互関係が生まれ、食物連鎖がつくられ、きちんと機能する生態系がつくられるのである。そして、その新しい生態系をつくっている生物たちの中には、「大昔、ヒトという生物がいて、彼らは我々が住みやすい地球環境をつくってくれたとてもありがたい生物だったんだよ」と、子孫に語り継いでいるものもいるかもしれない。
このように考えると、生態系の善し悪しを考えるときには、誰を中心にするか、いつを基準とするのかによって評価が大きく変わることがわかる。したがって、議論をするときには、その基準を決めなければならないだろう。
(注 1)浮遊する:浮かび漂う
(注 2)優占している:ここでは、数が多い
# 問題
# 人類が滅びた場合の生態系について、筆者はどのように考えているか。
- 1. 環境を自ら変えることで生き残る生物種が現れる。☓
- すると、今、人類が強い力で地球環境を変えて生態系を大きく攪乱しても、人類は滅びるかもしれないが、その急激に変化する環境をうまく生き抜き、新たにつくられた環境の中で繁栄する生物種が必ず出てくるに違いない。
- 2. 人類が繁栄していた以前の生態系に戻る。
- 3. 新たな環境変化が起きず安定する。
- 4. 新たに繁栄する生物種が現れる。 ◯
# 読解 (六) - 2018 年 12 月 N1
# 文章
人間はおかしなもので、自分が苦労して作ったり、特定の誰かが自分のために作ってくれたと思うと、より深い満足感を覚えるものらしい。それは恋人が編んでくれたセーターをプレゼントされた時のことを思えば、容易に想像できよう。モノにではなく、そこに込められた「思い」こそが人を満足させ、幸福にするのである。
だとすると「労働や生産」を家庭から切り離すことで成立する大量生産・大量消費システムの進展は、身の周りからそうした「思い」や「かけがえのなさ(注1)」を消し去っていく過程だったと言えなくもない。
かつて何でも手作りしていた時代には、身の周りに手作りのモノやサービスがあふれていたため、金銭を払って得る商品やサービスにそんな「思い」や「かけがえのなさ」を要求する必要もなかった。人々が商品に求めたのは単に機能と安さだった。だからこそ、均質な機能を持つ商品を安く供給できる大量生産が有効だったのである。
しかし、ある程度商品が行き渡ると①事情は違ってくる。人間は持たざる時には人並みを求めるが、ひとたび人並みになるや、今度は人との違いを求めだし、人と同じ商品では満足できなくなるからだ。この隘路(注2)を現代の資本主義はデザインによってモード(流行)を作りだしたり、特定の商品を持つことが社会的地位の象徴であるかのように思わせることで切り抜けてきた。
頻繁に繰り返される自動車のモデルチェンジや、去年買った服を今年着るのが恥ずかしいくらいに目まぐるしく変わる流行のファッション。機能的には軽自動車で十分であるにもかかわらず、乗っている自動車の大きさや豪華さによって自分の価値が判断されるような気がして、より高級な車を買いたくなるのもそのためだろう。
(中略)
ただ、モノによって自分を他と差別化するというこのやり方は、②深刻な矛盾に陥らざるをえない。つまり、社会に流布された豊かさや幸福のモデルに自分を合わせることで個を主張するわけだから、自分を個性化しようとすればするほど本当の自分の色を消し去り、逆に没個性化していくという矛盾である。
消費財がほぼ万人に行き渡り、しかも所得の大きな格差も無くなって、モノによって自分を他者と差別化することが困難になりつつある現在、この矛盾はこれまでになく鮮明になってきている。もう買いたいモノがないという現状は、その端的な現れだろう。こうした消費社会の矛盾を自覚した時に人が立ち戻る場所は、やはり「思い」とか「かけがえのなさ」しかないような気がする。
記号と化したモノに人が操られている現状を脱し、人がモノを使う本来の姿に戻るためにも、満足感や幸福感は何によってもたらされるのか、今一度考える必要があるのではないか。
(注1)かけがえのなさ:他に代わりがないほど貴重であること。
(注2)隘路:ここでは、難しい状況
# 問題
# ①事情は違ってくるとあるが、どのように違ってきたか。
- 1. 人と違う商品を持つことに意味を見いだすようになった。 ◯
- 2. 人と違う商品を持たなくても個性を表せるようになった。 ☓
- 特定の商品を持つことが社会的地位の象徴であるかのように思わせることで切り抜けてきた。
- 3. 特定の商品を求めることに疑問を感じるようになった。
- 4. 特定の商品を持つことでは自身の価値を高められなくなった。