人
プロジェクトの目的は変革を通じて組織を変える。その成功はチームの能力、チーム間の関係性、そして影響を受ける人々に左右される。
定義
- 組織のエコシステム: 組織の内部関係者と外部関係者を含む、組織全体を取り巻く関係の集合。
- プロジェクト・エコシステム: プロジェクトに直接関係し、または影響を受ける要素に限定された関係の集合。
利害関係者
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プロジェクトに影響を与える、または影響を受ける個人・グループ・組織である(利害関係者は内部だけでなく外部にも存在する。)。
- プロジェクトに対して賛成か反対か
- プロジェクトの成果によって利益を得るか損失を被るか
- プロジェクトやその進捗に対して、積極的に協力するか、または妨害するか
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プロジェクト成功のためには、組織エコシステムとの関係を理解し、主要な利害関係者を特定すると定期的に再特定・更新し続ける能力が必要である。
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特定の基準
- 職権が高いこと(シニア・エグゼクティブ など)
- 影響範囲が広いこと(ユーザー、サブライヤー など)
カルチャー
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ある集団を特徴付ける共通の姿勢・価値観・ゴール・働き方。
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プロジェクトでは、組織エコシステムの異なる領域から人材が集まるため、それぞれが異なるカルチャーを持っている場合が多い。そのため、プロジェクト・チームとして独自のプロジェクト・カルチャーを確立する必要があるが、同時に組織全体との整合性を保つことが重要である。
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主要なインフルエンサーとともに構築したプロジェクトに関する共通理解は、プロジェクト要約書の一部として整理すると、複数レイヤーにまたがる意思決定の指針となる。
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プロジェクトの進捗に伴い、主要な関係性やインフルエンサーは変化する可能性がある。共通理解の有効性を維持し、プロジェクト・カルチャーの進化を支援するために、以下のタイミングで確認・更新を行う必要がある。
- 各ステージの終了時
- 主要なインフルエンサーに変更があった場合
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実際の作業との整合性を保つために、以下を意識して定義された作業方法を継続的に進化させる。
- 望ましいプロジェクト・カルチャーとの整合
- 組織エコシステムとの整合
チームを成功に導く
プロジェクト・チームを成功に導くためには、以下の点を理解することが重要である。
- 権限と組織の複雑性
- 権限構造の乖離: プロジェクト・マネージャーは正式な権限を持つが、実際の権限構造は必ずしもそれに従わない場合がある。
- 多重の指揮系統: プロジェクトは一時的な組織であり、複数の指揮系統が存在する。
- リソースの競合: チームメンバーは他の業務との優先順位の競合を抱えることが多い。
- 人的要因と管理の限界
- 階層的な緊張: メンバーがマネージャーより年長であるなど、階層的な緊張が生じる場合がある。
- 報酬・キャリアの制約: 報酬やキャリアなど、動機づけ要因の一部はマネージャーの管理範囲外にある。
これらの要因により、プロジェクトでは権限の行使が難しく、従来のビジネス・チームとは異なるマネジメントおよびリーダーシップが求められる。
組織の境界を越えて導く
プロジェクトには、正式にアサインされたメンバー以外にも、影響を受けるがチーム外で活動する関係者が存在する。プロジェクトの権限範囲(場合によっては組織の境界)を越えて人々を導くには、カルチャーに対する理解(カルチャー知性) が必要である。
- 適応と連携: チームが適応し、相互に連携できる方法を見つける
- 境界の設定: 柔軟に調整可能な明確なプロジェクト境界を設定する
- 環境の構築: 人々が成功できる適切な条件を確立する
- 多様性の受容: 多様な観点が存在することを認識し、考慮する
- 個別の理解: 時間や関心の違いなど、個々の制約を理解する
効果的なチームを構築する
プロジェクト・チームは一時的な組織であり、メンバー同士が初対面でも、迅速に効果的な連携方法を確立する必要がある。
- 動的な役割管理: 役割と責任には、個人の能力・権限・可用性を反映させる。主要な関係に変化があった際は、即座にレビューと更新を行う。
- 心理的安全性の醸成: メンバーが尊重され、否定的な結果を恐れずに多様な視点を表現できる環境の構築が、効果的なチームには欠かせない。
チーム運営を支える主要なドキュメント・手法
- プロジェクト計画書
- チームのゴールを明確化し、共通の目的を形成する
- 利害関係者からの質問に対応できるようにする
- プロジェクト・マネジメント・チーム組織と役割記述書
- チーム構造、役割、責任、関係性を明確化する
- 主要な関係の構築を支援する
- コーチングやトレーニングのニーズ(影響力・抵抗対応など)を特定する
- コミュニケーション・マネジメント・アプローチ
- チーム内での協力・支援の方法を定義する
- プロジェクト・エコシステム内の関係構築方法を示す
- プロジェクト立ち上げ文書
- 合意された作業方法を明確化する
- チームが成果物の提供に集中できるようにする
- 成果物ベースの計画立案
- ユーザーのニーズ(成果物記述書)への合意を重視する
- 成果物間の依存関係と順序を明確にする
チームをまとめる
プロジェクトの協働形態(バーチャル・対面・ハイブリッド)に関わらず、互いに協力し合う方法を慎重に検討する必要がある。
- 共通して検討すべき事項
- 信頼の構築: 目的を明確にした定期的な会合を設け、組織やプロジェクトのサイロ間での信頼を醸成する。
- レジリエンスの強化: 困難に直面した際の回復力を高めるため、プロジェクト期間を通じて主要な関係をいかに維持するかを検討する。
- オフィス拠点(対面)チームの検討
- 有機的な関係構築の促進: デスク越しの会話、キッチン、廊下、ランチ、社交イベントなどで発生する「非構造化された活動」のベネフィットを考慮し、チームを同じ場所に配置することを検討する。
- 仮想・ハイブリッドチームにおける社会的結束の構築
- 対面機会の提供:
- 主要な人とチームが同じ場所で作業できる日を設定する。
- 人々が対面で会い、交流する機会やインセンティブを提供する。
- オンライン・コミュニケーションの充実:
- 構造化されていない自由なオンラインでの会話時間を確保する。
- 仮想チームのための研修・親睦会を開催する。
- ツールの活用:
- 仮想協働ツールを使用して、オンライン作業の有効性と効率性を高める。
- 対面機会の提供:
コミュニケーション
プロジェクトは組織に変化をもたらすため、目的やインパクトが誤解されやすい。適切なコミュニケーションがなければ、現状維持や抵抗が生じ、変革の障壁となる。
コミュニケーション・アプローチの基本原則
プロジェクトがもたらす変化への抵抗を最小限にするため、以下の視点でアプローチを開発する。
- 「聞く」ことの重視: プロジェクト・エコシステム内の懸念を早期に把握し、リスクを未然に防ぐ。
- メッセージのテーラリング: 主要なインフルエンサーと協力し、各グループの関心に合わせて情報を最適化する。
- 非公式チャネルの活用: 組織内のコミュニケーションは公式外で行われることが多いため、複数の形式・経路で情報提供とフィードバックを行う。
チーム形態別のコミュニケーション要点
| 形態 | 重視すべきポイント |
|---|---|
| 同じ場所にいるチーム | 情報が有機的に流れるよう複数の形式で提供し、つながっていないメンバーがいないかモニタリングする。 |
| リモートのチーム | 構造化されたアプローチが必要。雑談(非構造化情報)の時間も意図的に確保し、情報の流れを明確化する。 |
| ハイブリッドなチーム | 物理的な場所の違いによって、特定のグループの関与度が下がらないよう公平性に配慮する。 |
リスク管理と透明性の確保
- 静かなフェーズ(Silent Phase): インパクトが大きく敏感なプロジェクトでは、初期段階のコミュニケーションを意図的に制限し、誤解や噂の拡散を防ぐ。
- 報告バイアスの排除: 人は情報を無意識に操作する場合があるため、定期報告だけに頼らず、オープンで透明性の高い環境を構築してバイアスを下げる。
- 抵抗勢力への対応: プロジェクトに抵抗する人は「どこに注力すべきか」を示す指標となる。懸念事項に耳を傾け、誤解の特定と課題解決に繋げる。
マネジメント成果物
インプット
アウトプット
コミュニケーション・マネジメント・アプローチ(プロジェクト立ち上げ文書の一部)
- 目的: プロジェクト・エコシステム全体におけるコミュニケーションとフィードバックの手段および頻度を定義し、プロジェクトの整合性と実現を支援する。また、コントロールされた双方向の情報の流れを確立することで、利害関係者のエンゲージメントを促進する。
- コンテンツ概要
- スコープ: プロジェクトで管理されるコミュニケーションの範囲を定義する
- 利害関係者分析
- 成果やプロセスに影響を受ける人
- プロジェクトの成功/失敗に影響を与える人
- コミュニケーションのスケジュールと手順
- 対象: 各利害関係者グループ
- 内容:
- 目的
- 頻度
- チャネル/形式
- メッセージング
- 責任: コミュニケーション活動の担当者を明確化
- リソース: コミュニケーション活動に必要な支援(例: 広報、社内コミュニケーション)
- ツールと技法: コミュニケーションに使用する手法・ツール
- 標準: コミュニケーション活動に適用される標準。パブリック・エンゲージメント標準や倫理基準など
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