プロジェクトのクローズ
プロジェクトのクローズの目的は、プロジェクト成果物の受け入れが確認される終止符を打ち。PIDで定めた目標が達成されたことを認識し、漫然とした運用の継続を防ぐ。
達成目標
単なる作業の停止ではなく、以下の事項を確実に完了させる。
- ユーザー受け入れの確認: プロジェクト成果物がユーザーに承認されたことを確認する。
- 運用体制の確立: クローズ後もビジネス側で成果物を支援・維持できる体制を整える。
- 実績評価: パフォーマンスをベースラインと比較・レビューする。
- ベネフィットの評価: 実現済みのベネフィットを確認し、プロジェクト後のレビュー計画(ベネフィット・マネジメント・アプローチ)を更新する。
- 未解決事項への対処: 未解決の課題やリスクを継続対応勧告としてまとめ、適切な担当者へ引き継ぐ。
- 整然とした終了: 早期クローズであっても、単にプロジェクトを放置(放棄)せず、手続きに従って終了させる。
位置付け
明確な終了がもたらすメリット
プロジェクトを正式に閉じることで、組織に以下の効果をもたらす。
- 成功の認識: 達成目標が満たされたことを全関係者が認識できる。
- 責任の移転: プロジェクト成果物のオーナーシップが運用側へ正式に移転し、プロジェクト・マネジメント・チームは責任から解放され、解散が可能になる。
- コストの遮断: 以降、プロジェクトとしてのコストが停止できる。
- 学習の機会: 未達成のゴールを特定し、将来の取り組み課題として整理できる。
実施のポイント
- 有限性の確保: プロジェクトが始まりと終わりのある活動としての特性を維持するために不可欠なフェーズである。
- 早期クローズへの対応: ビジネス・ケースの失効などで途中で打ち切る場合も、投げ出さずに整然とした終了を行うための枠組みを提供する。
- 計画的なクローズ: クローズ活動は、最終マネジメント・ステージの計画書の一部としてあらかじめ組み込んでおく。
- 継続対応勧告: 終了後に実施すべき特定の処置を文書化する。対象者のニーズに合わせ、報告書形式やミーティングなど、最適な形式で提供する。
- 通知: プロジェクト・エグゼクティブは、ビジネス・レイヤー(組織の上層部)に対してプロジェクトの終了を正式に通知する。
活動
| インプット | 活動 | アウトプット |
|---|---|---|
| プロジェクト終了が近づく(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | 計画されたクローズの準備 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| プロジェクト終了が近づく(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | プロジェクトの受け入れの確認 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| プロジェクト終了が近づく(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | プロジェクトの評価 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| プロジェクト終了が近づく(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | プロジェクトのクローズの要求 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| 早期クローズの要求(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | 早期クローズの準備 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| 早期クローズの要求(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | プロジェクトの受け入れの確認 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| 早期クローズの要求(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | プロジェクトの評価 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
| 早期クローズの要求(このプロセスをトリガー) プロジェクト・ログ(レビュー) プロジェクト立ち上げ文書(確認) ビジネス・ケース(確認) プロジェクト計画書(レビュー) | プロジェクトのクローズの要求 | プロジェクト・ログ(更新) プロジェクト計画書(必要に応じて更新) ベネフィット・マネジメント・アプローチ(必要に応じて更新) 教訓報告書(作成) プロジェクト終了報告書(作成) |
計画されたクローズの準備
プロジェクトが完了条件を満たし、クローズ可能な状態にあることを確認した上で、プロジェクト委員会に対してクローズ勧告を行うための準備を整える活動である。
- PMに推奨される処置
- 関係者への周知と広報
- 通知対象の特定: コミュニケーション・マネジメント・アプローチに基づき、終了を知らせるべき組織や利害関係者を特定する。 *価値の最大化: 単なる終了通知だけでなく、広報(PR)やマーケティングの機会として活用できるコミュニケーション活動についても検討する。
- 記録の整理と保管
- ログの閉鎖: 運用中だった各種プロジェクト・ログを正式にクローズする。
- アーカイブの確保: 将来の監査や教訓の参照に備え、デジタルおよびデータ・マネジメント・アプローチに従ってプロジェクト情報を安全に保管する。 *チームの意思決定やパフォーマンスの正当性を証明可能にする。
- 最終手続きの起案
- 通知案の作成: プロジェクト委員会がレビュー・承認するためのプロジェクトのクローズ通知(案) を準備する。
- 関係者への周知と広報
早期クローズの準備
ビジネス・ケースの失効などにより、プロジェクト委員会から早期終了の指示があった際に実施する活動である。
- 実施のポイント
- 価値の回収: 進行中の作業を単に放棄するのではなく、それまでに生み出された価値(成果物)を可能な限り回収する。
- 透明性の確保: プロジェクトの中止によって生じたビジネス上の損失を明確に示す。
- PMに推奨される処置
PMは、混乱を最小限に抑え、組織の資産を守るために以下の処置を講じる。
- 現状の記録と評価
- 要求の記録: 早期クローズの要求をプロジェクト・ログや課題報告書に記録し、プロジェクト計画書を最終実績に基づいて更新する。
- 成果物の仕分け: プロジェクト支援と連携し、各成果物のステータスを以下の観点で評価・分類する。
- 承認済み / 開発中 / 条件付き承認済み / 未着手
- 安全確保(養生やデータ保護)が必要なもの
- 他のプロジェクトで転用・再利用できる可能性があるもの
- 価値の回収と追加作業
- 回収手段の合意: 作成中の成果物をどう扱うか(完成させるか、現状で保存するか、廃棄するか)、プロジェクト委員会と協議して決定する。
- 追加作業の実施: 他プロジェクトに役立つ成果物の完成や、未完成状態での安全確保(例: 建設途中の建物の耐候処理など)が必要な場合、その作業を計画する。状況によっては、これらの対応のために例外計画書の作成が必要になる。
- リソースの管理
- リソースの解放: 人員や資材を予定より早くリリース(解散)できる見込み、またはその準備が整ったことをビジネス側に通知し、承認を得る。
- 現状の記録と評価
プロジェクトの受け入れの確認
プロジェクト成果物のオーナーシップを、プロジェクト・マネジメント・チームから運用および保守環境(ユーザー側)へ正式に移管することを確認する活動である。
- 実施のポイント
- 移管の柔軟性: 移管はプロジェクト終了時の単一リリースだけでなく、フェーズごとの段階的なデリバリーも含まれる。
- 早期クローズ: プロジェクトが途中で終了する場合でも、承認済みの成果物については、プロジェクト委員会の指示に従ってオーナーシップをユーザーに移管する。
- ベネフィット・マネジメント・アプローチの更新: 成果物の提供に伴い、アプローチを更新する必要がある。これには、プロジェクト終了後のベネフィット・レビューや運用時のパフォーマンス・レビューの計画を含める。これにより、予期せぬ副産物(有益なものも有害なものも含む)や教訓を特定することが可能になる。
- プロジェクト外の活動: プロジェクト完了後の実際のベネフィット・レビュー自体はプロジェクト活動ではない。プロジェクトの責務は、あくまでレビューが確実に実施されるように計画を立てることである。
- PMに推奨される処置
- 継続対応勧告の作成
- 未解決事項の引き継ぎ: 未完了の作業、残存する課題、リスクに対処するための継続対応勧告を準備する。
- 対象者別の最適化: 人事・財務・業務など、成果物を利用する特定のユーザーグループごとに個別のアクションプランを作成する場合もある。
- 計画の最終確認
- 評価活動の記載: ベネフィット・マネジメント・アプローチに、運用開始後のベネフィット測定活動が正しく記載されているかを確認する。 *この活動は、プロジェクト成果物がしばらく運用された後で初めて測定できるベネフィット(信頼性パフォーマンスなど)を確認する目的で実施する。
- 移管方法の遵守: PIDを調査し、運用担当者への適切な成果物提供手順(トレーニングやマニュアル提供など)を確認・実行する。
- 継続対応勧告の作成
プロジェクトの評価
プロジェクトの全工程を振り返り、当初の計画に対してどれほど成功したかを客観的に評価する活動である。
- 実施のポイント
- 組織学習の促進: プロジェクトの経験を組織の資産として活用する。成功要因だけでなく、早期クローズに至った理由も分析し、将来のプロジェクトの成功率を高める。
- 見積精度の上昇: 今回のプロジェクトにおける見積もりと実際の実績(測定基準) を比較・分析することで、今後のプロジェクトにおける計画立案の精度を改善できる。
- PMに推奨される処置
- ベースラインと現状の比較
- 当初意図の確認: プロジェクトの立ち上げ・ステージで合意・ベースライン化された初期のPIDをレビューし、プロジェクトの原点を確認する。
- 承認済み変更の確認: プロジェクト期間中に承認された変更を反映した最新バージョンのPIDをレビューし、最終的な達成目標がどのように変化したかを把握する。
- 報告書の作成
- プロジェクト終了報告書の作成: プロジェクト・マネジメント・チームと協議し、パフォーマンスの総括や目標達成度を記したプロジェクト終了報告書を準備する。
- 教訓の形式知化: プロジェクト・ログを精査し、将来のプロジェクトに適用可能な知見を特定する。チームと協議の上で、プロジェクト教訓報告書に記載する。
- ベースラインと現状の比較
プロジェクトのクローズの要求
PMがプロジェクト委員会に対し、最終ステージの終了とプロジェクト全体のクローズを正式に要求する活動である。
- 実施のポイント
- 正当性の提示: 意思決定の根拠として、プロジェクトの全期間を総括したプロジェクト終了報告書を提出する。
- 成功の祝賀と承認: 完了を公式に認め、貢献した関係者への感謝を表明することで、組織にポジティブな影響を与える。
- プロジェクト・マネージャーに推奨される処置
- パフォーマンスの総括と報告
- 概要の説明: プロジェクト全体のパフォーマンスを要約してプロジェクト委員会に報告し、クローズの準備が整っていることを確認する。
- 例外事項の強調: 仕様外項目(オフスペック)のうち、完全な修正ではなく条件付き承認となった箇所を明確に伝え、委員会の認識を合わせる。
- 正式な要求
- クローズの要求: 必要なすべての成果物が引き渡され、管理業務が完了したことを踏まえ、プロジェクトの正式なクローズを委員会に求める。
- 感謝の提案: プロジェクトの成功を祝い、関係者の労をねぎらうための感謝の表明(正式メッセージやイベントなど)を委員会に提案する。
- パフォーマンスの総括と報告
適用
一般的な考慮事項
- 活動の柔軟性: プロジェクトの状況に応じて、活動の結合、分割、同時に実行できる。
- プロセスの接続: プロジェクトの指揮(DP)およびステージのコントロール(CS) とのインターフェースの完全性を確保しなければならない。
- 移管の確認: 成果物の移管(ハンドオーバー)は、必ずしも最終ステージで行われるとは限らない。過去のステージで既に移管が完了している場合、本プロセスではすべての移管作業が漏れなく完了しているかの最終確認に専念する。
役割のテーラリング
責任の所在を明確にしつつ、実務面では組織に応じた柔軟な分担が可能である。
- PMの実行責任と委任: PMは、本プロセスで作成されるマネジメント成果物の作成に実行責任を負う。ただし、全体的な責任を保持したままであれば、具体的な作業を他者に委任できる。
- シニア・ユーザーの関与: プロジェクトの受け入れ確認活動において、プロジェクト終了後のベネフィット・レビューが確実に計画されているかの確認を、シニア・ユーザーが主導して行う場合がある。
責任
| 活動 | ビジネス・レイヤー | プロジェクト・エグゼクティブ | シニア・ユーザー | シニア・サプライヤー | プロジェクト・マネージャー | チーム・マネージャー | プロジェクト保証 | プロジェクト支援 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 計画されたクローズの準備 | A | C | C | R | C | C | C | |
| 早期クローズの準備 | A | C | C | R | C | C | C | |
| プロジェクトの受け入れの確認 | A | C | C | R | I | I | I | |
| プロジェクトの評価 | A | C | C | R | C | C | C | |
| プロジェクトのクローズの要求 | I | A | C | C | R | I | C | I |
R = 実行責任、A = 説明責任、C = 協議先、I = 情報先
プロセスへのプラクティスの適用
| プラクティス | プロジェクトのクローズ・プロセスへの適用 |
|---|---|
| ビジネス・ケース | 実績(コスト・ベネフィット)を反映して最新化し、未実現のベネフィット予測を更新する。プロジェクト終了後の責任の所在を明確にするため、ベネフィットおよび持続可能性アプローチをレビュー・更新する |
| 組織化 | チームのパフォーマンスとウェルビーイングを評価し、教訓として記録する。クローズに伴う各種管理アプローチ(コミュニケーション・変更・商業)の要件を確認し、プロジェクト・マネジメント・チームを解散してオフボーディングを完了させる |
| 計画 | 計画と実績を比較・分析し、プロジェクト全体のパフォーマンスを分析し、教訓ログやプロジェクト終了報告書の重要な根拠となる |
| 品質 | 最終ステージまでの品質活動がすべて完了したことを品質登録簿で確認する。クローズに関連する品質要件をレビューし、品質登録簿をクローズする |
| リスク | 最終ステージのリスクを整理し、解決しなかった残存リスクをビジネス側(運用等)へ移転する。リスク・マネジメント・アプローチを確認後、リスク登録簿をクローズする |
| 課題 | 未解決の課題を整理し、ビジネス側が引き継ぐべき継続対応勧告を特定する。課題マネジメント・アプローチを確認後、課題登録簿をクローズする |
| 進捗 | 成果物登録簿により全成果物の提供を確認し、登録簿を閉鎖する。データのアーカイブ方法(場所・手順等)を確認し、プロジェクト終了報告書を発行。最後にデイリー・ログと教訓ログをクローズする |
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