成果物デリバリーのマネジメント
成果物デリバリーのマネジメント・プロセスの目的は、プロジェクト・マネージャー(PM)とチーム・マネージャー(TM)間のつながりをコントロールすること。スペシャリスト成果物の受け入れ・実行・報告・デリバリーの要件に合意することで、確実な成果物提供を実現する。
本プロセスは、チーム・マネージャーの観点からプロジェクトを捉える(ステージのコントロール・プロセスはプロジェクト・マネージャーの観点から捉える)。
達成目標
以下の事項を確実に行うことで、品質と計画を遵守したデリバリーを実現する。
- 合意の確立:チームに割り当てられた成果物に関する作業が、認可され合意されること
- 明確な理解:作成すべきもの、必要な労力・コスト・期間をチーム側が把握していること
- 品質と許容度の遵守:計画された成果物が期待品質を満たし、許容度内で提供されること
- 期待の管理:PMが期待値を適切に管理できるよう、正確な進捗情報を合意された頻度で提供すること
位置付け
TMの動き
TMはチームの代表として、以下のステップで成果物の作成を管理する。
- 準備と計画:WP 合意から作業開始までの一連の準備作業
- WPの受け入れ:PMから認可されたワーク・パッケージ(WP)を内容合意の上で受け入れる
- チーム計画書の作成:WPに基づき、具体的なチーム計画書を作成する(ステージ計画書作成と並行して実施可能)
- 関係の維持:WP 記述書で定義された開発・運用・保守間の連携を維持する
- 開発と品質管理:指定手法に従いスペシャリスト成果物を作成・品質確認する作業
- 手法の遵守:指定された開発手法に従い、成果物を開発する
- 品質の立証:成果物記述書に定められた品質手法を用い、各成果物が仕様を満たしていることを証明する
- 提供:承認取得および成果物のPMへの引き渡し
- 承認の取得:完成した成果物に対し、指定された承認権限者から正式な承認を得る
- 成果物の納品:WP 記述書で指定された手順に従い、承認済み成果物をPMへ提供する
実施のポイント
- 自律性とマイクロマネジメントの回避:TMへの適切な権限委任によりチームの生産性を守る
- 権限の委任:PMは、WP 記述書で確立された許容度と信頼に基づき、TMに十分な自律性を与える
- 副作用の防止:PMによるマイクロマネジメントは、チームのフラストレーションや作業の遅延を招くため、これを回避して求められている成果の提供に集中させる
- PM 視点とTM 視点:両者の役割は観点が異なり、それぞれに集中すべき領域がある
- PM(ステージのコントロール):ステージ全体がうまく回っているかを俯瞰する
- TM(成果物デリバリーのマネジメント):割り当てられた成果物を、品質通りに期間内に作れるかに集中する
- チーム計画書の柔軟性:契約・規模・複雑性に応じて形式を選択できる
- シンプルな場合:WP 記述書にスケジュールを付け加えた程度でよい
- 複雑な場合:ステージ計画書に近い詳細な構成とする
- 契約が絡む場合:WP 自体が契約書の一部として機能することもある
主要なアウトプット
| アウトプット | 内容 |
|---|---|
| チーム計画書 | TMがWPを完遂するために作成する実行計画。チーム構造・スケジュール・作業取り決めを含む |
| スペシャリスト成果物 | TMのチームが開発・提供する専門的な成果物 |
| チェックポイント報告書 | TMがPMに定期的に提供する進捗報告書 |
活動

| インプット | 活動 | アウトプット |
|---|---|---|
| ワーク・パッケージの認可(このプロセスをトリガー)、ワーク・パッケージ記述書(レビュー) | ① ワーク・パッケージの受け入れ | チーム計画書(作成・更新) |
| チーム計画書(レビュー)、ワーク・パッケージ記述書(レビュー) | ② ワーク・パッケージの実行 | プロジェクト・ログ(更新)、スペシャリスト成果物(作成) |
| チーム計画書(レビュー)、ワーク・パッケージ記述書(レビュー)、プロジェクト・ログ(レビュー) | ③ ワーク・パッケージの評価 | チェックポイント報告書(期間ごとに作成)、プロジェクト・ログ(更新) |
| チーム計画書(確認)、ワーク・パッケージ記述書(確認)、プロジェクト・ログ(レビュー) | ④ ワーク・パッケージの完了の通知 | チーム計画書(更新)、ワーク・パッケージ(完了)、完了したワーク・パッケージの通知(ステージのコントロール・プロセスをトリガー) |
各活動の詳細
① ワーク・パッケージの受け入れ
作業が開始される前に、PMとTMの間で、提供内容・制約・手順・計画の妥当性について完全な合意を形成する活動である。
内容の理解と計画の策定
- 内容の理解:WP 記述書をレビューし、成果物の内容と納期を正確に把握する
- チーム計画書の作成:制約条件を遵守し、具体的なチーム計画書を作成する(アジャイル・アプローチを使用する場合であればタイムボックス内に収める)
- 標準への準拠確認:チーム計画書が実行可能か、またサプライヤー側の標準に準拠しているかについて、プロジェクト保証(サプライヤー)と協議する
品質とログの管理
- 品質体制の確認:追加の品質レビュー担当者が必要かどうかをプロジェクト保証と協議し、プロジェクト・ログ(品質登録簿等)を最新化する
- 手順の確認:プロジェクト・ログを更新する際の手順をWP 記述書で確認する
承認とリスク評価
- 計画の承認取得:チーム計画書について必要な承認を得る(顧客・サプライヤー間の商業的関係においてPMによる承認が不適切な場合は、シニア・サプライヤーがレビューと承認を行う)
- リスクのレビュー:チーム計画書に基づきリスクのレビューを実施する。新たなリスクを特定した場合はPMに通知し、許可されている場合は直接プロジェクト・ログを更新する
- 最終合意:すべての条件が整った段階で、WPの提供に正式に合意する
② ワーク・パッケージの実行
認可されたWPの要件に従い、実際にスペシャリスト成果物を開発・モニタリングする活動である。
実施のポイント
- 自律的な管理:TMは、設定された許容度の範囲内であれば、自律的に作業の実施や是正処置を行うことができる
- 予測に基づく行動:WPが許容度内で完了できると予測される限り、TMは自らコントロールを継続する
- 逸脱の報告:WPの許容度を超えることが予測された場合、TMは独断で処置せず速やかにPMに課題を提起する。その後の処置はPMが決定する
- 心理的安全性の確保:チーム内で課題やリスクを隠さず、迅速かつ適切に対処できる環境を維持することがデリバリー成功の鍵となる
TMに推奨される処置
- 開発の管理と進捗報告:作業を要件通りに進め、発生事象をPMへ適時共有する
- 要件の遵守:WP 記述書とチーム計画書に基づき、成果物が正しく作られるよう現場をリードする
- 情報のフィードバック:新たな課題・リスク・教訓を特定した場合はPMに通知し、PMが必要と判断した処置を確実に実行する
- 品質管理と記録の更新:品質活動の完了と成果物の承認状況を記録・報告する
- 品質活動の完了報告:計画された品質活動が完了するたびにPMへ通知し、品質登録簿を最新の状態に更新する
- 承認と登録:完成した成果物に対して承認権限者から正式な承認を取得し、成果物登録簿のステータスを更新する
③ ワーク・パッケージの評価
TMが、WP 記述書で定められた期間ごとの進捗を自らレビューし、その状況をPMへ報告する活動である。
運用のポイント
- 多角的なレビュー:単なるスケジュールの進捗だけでなく、品質・リスク・課題・教訓など、WPに関連するあらゆる側面を確認し、情報の正確性を担保する
- サプライヤー独自の管理:チーム・マネージャーがサプライヤー組織に所属している商業的な状況では、プロジェクト全体のログとは別に自社固有の管理ツールや登録簿を使用して評価を行う場合がある
- プロジェクト支援の活用:プロジェクト支援の役割が、プロジェクト全体のログから当該 WPに関連する情報を抽出して提供し、TMの評価作業をサポートすることもある
推奨される処置
- 状況のレビュー:報告前に各ログ・登録簿を網羅的に確認してWPの全体像を把握する
- 計画との比較:WP 記述書とチーム計画書をレビューし、期待される進捗と実績を比較する
- ログの確認:課題登録簿・リスク登録簿・教訓ログを確認し、WPに影響を与える事象を整理する
- 品質と成果物の確認:品質登録簿(活動ステータス)と成果物登録簿(承認レコードを含む完了状況)を確認する
- ステータスの報告:把握した状況を定められた手段でPMへ伝達する
- 正式報告:把握したステータスをチェックポイント報告書にまとめ、PMに提供する
- プル・システム:アジャイルを採用している場合は、報告書を送る代わりにPMがカンバン・ボードやバーンダウン・チャートなどの進捗チャートを直接確認できる環境を維持する
④ ワーク・パッケージの完了の通知
WPに含まれる全作業が終了し、すべての成果物が承認されたことをPMへ正式に伝え、引き渡しを行う活動である。
運用のポイント
- 品質の保証:単に作業が終わったという報告ではなく、定義された品質基準をクリアし、必要な承認を得ていることを裏付ける
- 例外事項の共有:完了時に残っているリスクや仕様外項目(オフスペック)を明確にし、PMが次の判断を下せるようにする(全てが完璧に終わるのが理想だが、一部の軽微な不備を承知で承認されたケースもある。そうした未解決の課題やリスクを隠さずに強調して伝えることが重要)
TMに推奨される処置
- 成果物の提供と確認:規定の手順で成果物を引き渡し、全承認が完了していることを検証する
- 規定手順による提供:WP 記述書で合意された手順に従い、完成した成果物をPMに提供する
- 承認の最終検証:承認レコードをレビューし、WPによって提供されるすべての成果物が適切に承認済みであることを確認する
- 記録の更新とレビュー:チーム計画書とプロジェクト・ログを最新化して完了状態を記録する
- チーム計画書の完了:計画書を最新化し、当該 WPが完了したことを記録する
- ログの総点検:プロジェクト・ログ(リスク登録簿・課題登録簿・教訓ログ)をレビューし、WPに関連する未解決事項や得られた知見を整理する
- PMへの報告と最終通知:パフォーマンスと残存事項を説明した上でWP 完了を正式に通知する
- パフォーマンスの説明:WP 記述書での合意内容に対し、実際の作業パフォーマンス(期間・コスト・品質など)がどうであったかをPMに説明する
- 残存事項の強調:完成した成果物に関連する未解決の課題(仕様外項目など)や依然として残っているリスクをPMに対して強調して伝える
- 完了の正式通知:上記の確認を経て、PMにWPの完了を正式に通知する
プロセスの適用
一般的な考慮事項
専門的な知見を最大限に活かし、チームの自律性を重んじるコントロールが推奨される。
- 活動の柔軟な運用:状況に合わせて活動を結合・分割・同時実行できるが、常にステージのコントロール・プロセスとの確実な接続を意識しなければならない
- 専門手法に適した管理:専門的な作業には、その種類に適したデリバリー手法(アジャイル等)や尺度が用いられる。PMとTMはこれに合意し、WP 記述書に反映させ、プロジェクト全体の管理アプローチと整合させる
- WPの階層化とガバナンス:WPは必ずしも小規模とは限らない。大規模なWPを扱う場合は、TMがさらに小さなWPへと階層化してチーム・メンバーに割り当て、適切なコントロール環境を構築する
- 協調的な文化:TMとメンバーの関係は協調的であるべきである。TMは単に命令を下すのではなく、メンバーのオーナーシップを促すファシリテーターとして振る舞い、プロジェクト目標への貢献を支援する
役割のテーラリング
組織の規模や複雑性に応じて、マネジメント体制を柔軟に構成できる。
- TMの役割と代行:TMはプロセスの全活動に実行責任を負うが、PMがTMを兼任できる
- TMの階層化:大規模プロジェクトでは、WPを分割して複数のTMを配置し、報告ラインを階層化できる。この場合、上位のTMが全体の実行責任を負い、PMへ報告を行う
- WP 記述書の柔軟性:WP 記述書の作成・更新・承認の担当者は、PMとTMが内容に合意していれば、プロジェクトの必要に応じて柔軟に変更できる
責任
| 活動 | ビジネス・レイヤー | プロジェクト・エグゼクティブ | シニア・ユーザー | シニア・サプライヤー | プロジェクト・マネージャー | チーム・マネージャー | プロジェクト保証 | プロジェクト支援 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①ワーク・パッケージの受け入れ | A | R | I | |||||
| ②ワーク・パッケージの実行 | A | R | C | C | ||||
| ③ワーク・パッケージの評価 | A | R | C | C | ||||
| ④ワーク・パッケージの完了の通知 | A | R | C | I |
R = 実行責任、A = 説明責任、C = 協議先、I = 情報先
プロセスへのプラクティスの適用
| プラクティス | 成果物デリバリーのマネジメント・プロセスへの適用 |
|---|---|
| ビジネス・ケース | WP 記述書で定義されたベネフィットおよび持続可能性に関する要件を、実行プロセスの中で確実に充足させる |
| 組織化 | コミュニケーション・変更・商業の各管理要件を遵守する。チーム構造や作業スケジュールを記したチーム計画書を作成し、チームのウェルビーイングを継続的に監視する |
| 計画 | PMからの要求に基づき、WPを完遂するための具体的なチーム計画書を作成する |
| 品質 | スペシャリスト成果物を開発・提供し、WPの品質要件を満たす。品質登録簿を更新し、計画された活動と実績を記録する |
| リスク | チームレベルでリスクを管理し、リスク登録簿を最新化する。必要に応じてPMへエスカレーションする |
| 課題 | チームレベルで課題を管理し、課題登録簿を最新化する。必要に応じてPMへエスカレーションする |
| 進捗 | 成果物のステータスに基づき成果物登録簿を更新する。合意された頻度でチェックポイント報告書を提出し、教訓ログに知見を更新する |
他フレームワーク補足
| 概念 | PRINCE2 | PMBOK | PgMP |
|---|---|---|---|
| プロセスの位置付け | 成果物デリバリーのマネジメント(MP) | プロジェクト作業の指揮・マネジメント | (今後追記) |
| 作業単位 | ワーク・パッケージ | ワーク・パッケージ(WBS 最下位) | コンポーネント |
| チームレベルの計画 | チーム計画書 | (WBS 分解・活動リスト) | コンポーネント計画 |
| 進捗報告 | チェックポイント報告書 | 作業パフォーマンス・データ & レポート | (今後追記) |
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